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自然観察にかかわるおすすめの書籍を紹介します。


BIRDS and NATURE of COSTA RICA
(コスタリカの鳥と自然)


写真と文・唐沢孝一
カラサワールド自然基金、2021年6月30日発行
170×180mm、84ページ

問合せ・連絡先:カラサワールド ⇒ 


生物多様性の聖地の貴重な観察記録

唐沢さんが主宰するカラサワールド自然基金では、2011年から自然関係図書を出版してきた。 本書はその8冊目である。

コスタリカは中央アメリカの一国である。面積は四国と九州をあわせたくらいというから決して大国とはいえない。西側が太平洋、東側は大西洋(カリブ海)に面し独特な地形と気候をもっている。これが熱帯雲霧林、熱帯多雨林、熱帯乾燥林などを構成し、地球の宝物といわれる生物相をつくりだしている。
近年生物多様性の聖地のようにいわれるが、その情報は断片的なものが多く、観察者の視点からの実態はあまり伝えられていなかった。(なぜかコスタリカ方式などという政治の利害にからむ言葉はあったが)

唐沢さんを囲む観察グループは、2000年、2004年、2009年と3回コスタリカを訪れ、つぶさに自然や生物、それらと人とのつながりなどを観察した。それらの貴重な記録を手元に留めておくのではなく、エキスをまとめて世に遺そうと考えた。
これはカラサワールドの既刊図書と共通しているが、このまとめという作業は容易なものではない。さまざまな苦労があるはずだが、それ以上の楽しみもあったに違いない。

このツアーは「世界一美しい鳥ケツァールと生物を観察する旅」と謳われており、熱帯雲霧林の中でのケツァールとの出会い、宝石の輝きといわれるハチドリ類の飛翔とその給餌の有様などがくわしく述べられている。庭に設置されたハチドリフィーダーなどはことに面白い。
これらを育んでいるのが熱帯雲霧林であり、広大な保護林内を行く長い吊り橋で林の内部の観察が楽しめる。まさにスカイウォークである。

カリブ海側には熱帯多雨林が発達し、ここでもケーブルカーでの林内観察ができる。多様な生物との出会いがあるが、ヤドクガエル類の観察も面白い。その一種イチゴヤドクガエルは樹上に着生するプロメリアの葉に溜まる水でオタマジャクシを育てる習性があり、裏表紙の写真にもなっている。
その他キノコを栽培するハキリアリ、ドリスドクチョウ、タランチュラ、アカメアマガエルなどなど、垂涎の種類が次々にでてくる。編集には取捨選択に悩んだことであろう。歩いていて時々ナマケモノに出会うとはなんとも贅沢ではないか。これらは動物園で見るのではなく、コスタリカという自然のなかに生きる地位を占めている。筆者が強く指摘するように、そのことが地球の宝物とされる所以である。

筆者があとがきに述べている。もう一度行けるとしたらコスタリカを選びたいと。
もはやかなわぬことながら高齢な私などにもそう思わせる本である。

2021年8月 自然観察大学名誉学長 岩瀨徹

※ 本書は非売品ですが、ご希望の方は頭書のカラサワールドにご連絡ください。

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