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自然観察にかかわるおすすめの書籍を紹介します。


子どもと一緒に見つける
空を見上げるさんぽ図鑑

NPO法人自然観察大学・お散歩研究会「ぽかぽか」/監修
永岡書店 2023年9月10日発行
新書判、256ページ、定価:1,400円+税
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子どもと一緒に利用したい楽しい本

このシリーズでは、さきに「草花さんぽ図鑑」「身近な生きものさんぽ図鑑」などが刊行されており、この2冊はNPO法人自然観察大学は内容の監修を行なっている。いずれも順調な売れ行きを示していると聞くが、監修がその一端を担っているかと自負している。
そのシリーズで「空を見上げるさんぽ図鑑」という企画があると聞いたとき、「何だそれは?」といった程度であまり関心をもたなかった。

自然観察はときには広い視野で見渡すこともあるが、目線を低くしてじっくりと見ることが多い。地面に這いつくばって何時間もという人もいる。
この本では、ときどきは目線を上げて新たな発見や疑問を見つけようという(「はじめに」より)。
それはそれでおもしろいが、自然現象から人工構造物そして生きものまでを1冊にまとめようとすると簡単ではない。できた本を見ると手に取って見たいような仕上がりになっているが、各項目たがいの関連性があるわけではない。
1章:空、2章:街中、3章:鳥、4章:虫、5章:樹木 という構成である。


このうち空の章を見ると、青空、夕焼け、雲、雨、風、虹、月、星座、人工衛星などの項目が並ぶ。昔学んだ雲のいろいろなどを思い出す。最近耳にする線状降水帯の解説も出てくる。さし当たっての知識を得るには便利である。
街中の章には、飛行機、ヘリコプター、ドローン、作業車、モノレール、タワー、風力発電、信号機、ツリーハウスなどが並ぶ。
なるほど街で見上げると目にはいる。これらについても豆知識が得られる。もの知りにはなれそうだ。

3章以後は動植物であり、NPO法人自然観察大学が監修を担っている。
鳥と虫については「生きものさんぽ図鑑」を下敷きにしている。写真や文はかなり入れ替わっているが、ねらいが同じ本だけに新たな執筆、構成には苦労したことと思われる。
5章の樹木は「草花さんぽ図鑑」にはなかったものである。「見上げる」というテーマからは樹木は当然含まれるが、ページが限定されて種類の物足りない感は否めない。このシリーズの独立した「樹木さんぽ図鑑」として、将来の企画・発刊に期待しよう。

天体、気象、街の構造物などと生きものを「さんぽ図鑑」という目線でくくる…
一見無理ではないかと思ったが、「子どもと一緒に」という利用価値をもった楽しい本ではある。
いろいろな観点から疑問や関心をもち、観察の世界に近づく手引きになるであろう。
観察の切り口は多様である。

2023年10月 自然観察大学名誉学長 岩瀬徹

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