< 本の紹介 >

自然観察にかかわるおすすめの書籍を紹介します。


子どもと一緒に見つける
草花さんぽ図鑑


NPO法人自然観察大学/監修
永岡書店 2019年4月15日発行
新書判、256ページ 定価:1,300円+税


話題豊富な『草花さんぽ図鑑』

「子どもと一緒に見つける」という本書のタイトル、とても魅力的です。
植物図鑑は、大人向けも子ども向けも沢山あります。しかし、「親子で一緒に」とか「家族で一緒に」など世代をこえて楽しめる、話題にできる、そんな図鑑は初めてではないでしょうか。
本書の表紙は、手をつないだ親子がシロツメクサやアカツメクサ、オオイヌノフグリなどの花を見つけ、しゃがみ込み、「草花のふしぎ」についてあれこれ話しています。それだけでもどんな本なのか、ワクワクしてきます。しかも、「監修NPO法人自然観察大学」とありますからなおさら期待が膨らみます。

さて、パラパラとページをめくります。種類ごとに花や果実などの写真があり、解説が1ページに収められています。つい、普通の植物図鑑のような印象を受けますが、とんでもありません。「葉は対生か互生か」「長さは何㎜、毛の有無は」といった記述は一切なし。散歩道で、たまたま気になる花や果実を見つけた気分で、どんな花なのか、解説の文を読み進みます。
その本文はというと、「スギナの生きた化石としての歴史」「ウラシマソウには浦島太郎の釣り糸の話」「昔、子どものおやつだったスイバ」というように、取り上げた植物のすべてについて、親子で話題にしたくなるような内容ばかりです。

さらにワクワクしたのは、解説の最後の「楽しみ方」のコーナーです。この植物の「見どころはどこ」「夜みるの、朝みるの」「ここを触ってみて」「茎を水につけると?」「こんな遊び方もあるよ」といった「観察の楽しみ方」が具体的に示してあるのです。
極めつきはタケニグサ。「実のついた穂を振ってみる、どんな音がする? ささやき草とも言うんだよ」。すぐにもやってみたくなります。
植物のこと、雑草のことをトコトン熟知し、長年にわたって植物と付き合ってこないととても書けません。


どの植物をとりあげても、親子で楽しめる内容です。それだけでなく、シニア世代にとってはお孫さんと一緒に、学校では先生と子どもたちが、一緒に楽しみ、話題が盛り上がりそうです。
初心者向けに編集されていますが、フィールドで自然観察会に携わっているプロの指導者にとっても、すぐにやってみたくなること、話してみたくなることばかり。自然観察大学の会員の皆さんにもご一読をお薦めします。

もう一つ、素晴らしいと思ったことがあります。花の多い「春、初夏、夏、秋」の観察とちがって、花の少ない冬のページはどうでしょうか。なんと、冬は「ロゼット図鑑」に絞り、冬越しの魅力を紹介しています。ロゼットは見た目には地味ですが、冬を乗り越えようとする植物の辛抱強さにこそ植物の本当の素晴らしさがあると思うからです。しかも、このロゼットが春や夏にはどんな花を咲かせ、実をつけるのかについて、対応するページが示してあります。すぐに参照できます。
理解のしやすさ、話題の豊富さに加えて、サイズはハンディー、雨にも濡れないカバー付き。一人でも多くの人に手にとっていただき、自然観察の入門書として役立てて欲しいと思います。

余談ですが、この本の企画を初めて知ったのは2018年の初夏。発行予定は2019年の春とのことでした。時間的に出版は難しいのではないか、と思いましたが、平成から令和への区切りの時期に予定通りの出版となりました。
図鑑の監修は自然観察大学としても初めての経験であり、いい財産になりました。監修に直接携わった岩瀬先生、村田先生、飯島先生、および編集者の情熱と努力に改めて感謝とお礼を申し上げます。

2019年4月 自然観察大学学長 唐沢孝一


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